VINTAGE EXPLORER 編
VINTAGE EXPLORER
- ・時計愛好家のあいだでは言わずと知れたロレックス エクスプローラーだが, その誕生は人類未踏の地へチャレンジする探検家(エクスプローラー)のために, 1953年に開発された。1953年, テンジン・ノルゲイとエドモンド・ヒラリーは登山家として初めて世界最高峰を制覇し, 瞬く間に歴史に名を刻むことになった。 彼らが遠征の際に携行したのが下の写真のロレックス クロノメーターで, 今日ではプレ・エクスプローラーと呼ばれており, 何世代も続くチューリッヒの時計店の地下にあるベイヤー時計博物館に展示されている。チケットを購入すれば, 実際に見ることができる。
- ・エクスプローラーはサブマリーナーやターノグラフと同じ1953年に登場し, これらのモデルは現代の私たちにとって馴染みのある見た目と雰囲気を持っていた。この年は, ロレックスと時計業界全般にとって重要な年であったと断言してもいい。この3つの時計が, 今日まで続くブランド イメージと象徴的なステータスの礎となるロレックス デザインの創世記を担うことになった。これらの時計は "スポーツ ウォッチ" であると同時に洗練されたデザイン要素を兼ね備える統一性のある製品であり, 生まれながらにして最高の実用時計であったと今に伝えられている。
- ・エクスプローラーのシンプルでクラシックなデザインは, 山頂だけでなく, どこにでも連れて行くことを可能とした。特に Ref.1016 は, 1960年~1989年 までの29年間に亘って製造された, ヴィンテージの殿堂入りモデルだ。控えめな36mm径のケース, ノンデイトのシンプルさと, ミラーダイヤルであれマットであれ, 鮮明なブラックダイヤルは人を引きつけるスポーツ ロレックスであり, いわゆる非合理な熱狂の対極にあるロレックスでもある。
左「ref.6202 TURN-O-GRAPH」 中「Ref.6350 EXPLORER」 右「Ref.6204 SUBMARINER」 出典元:HODINKEE, URL:https://www.hodinkee.jp/
初代 Ref.6150 / 6350 / 第2世代 6610
Ref.6150 / 6350 / 6610
- ①「Ref.6150 / 画像①」は, 1953年に製造された。初代エクスプローラーⅠだと多くのコレクターが主張する「Ref.6350」の1世代前のモデルである。この Ref.6150 には, のちのエクスプローラーⅠを代表する特徴を持ち, ノルゲイとヒラリーの登頂に使用されたモデルと同じムーブメント「Cal.A296」を搭載していた。36mm径のケースは, 最初期のモデルから現行のエクスプローラーに至るまで共通する仕様で, 針には これ以降のモデルより長い時分針を備えている。文字盤は, のちにエクスプローラーダイヤルと呼ばれるようになった "3・6・9" のレイアウトを採用しているが, 6時位置上に “Explorer” の表記があるのは一部のモデルだけで, それ以外の大半は "Precision" と表記されている。また, OCC(Officially Certified Chronometer)表記がない。これは, この時計がクロノメーター認定を取得していないためで, 他のエクスプローラーとは大きく異なる点だ。そして, クロノメーター認定ではないことと, 必ずしもダイヤルにエクスプローラー表記があるわけではないことから, コレクターの中では Ref.6150 を真のエクスプローラーと "みなさない" という意見もある。
- ②「Ref.6150 / 画像②」は, 1953年~1954年頃に製造されたエクスプローラーⅠで, Ref.6350 はベンツ時針を備えたモデルなど, 他にも多くのバリエーションが確認されており, リーフ針, インデックスがクサビ型, ホワイトダイヤルなどのベースが同一のバリエーションから, ドレス系のフルーテッド ベゼルやドレスブレス・革バンドなど, 外観自体が異なるものも多く, ロレックスの開発段階での試行錯誤が伺える。仕様が Ref.6350 と同様の場合でも「Ref.6359 や Ref.6298」など, リファレンスが異なる派生バリエーションが多いことも特徴のひとつである。また, ホワイトダイヤルを備える個体は通称 "アルビノ" と呼ばれている。Ref.6150 の主な仕様は, ケース径が36mmで防水性能50m, キャリバーは振動数:毎時18,000振動の「Cal.A296」を搭載し, 風防にはプラスチック素材のものを装備していた。これらが最初期の主な仕様であった。
- ③「Ref.6350 / 画像③」は, 1953年~1955年の約2年間に製造されたエクスプローラーⅠで, ロレックスの正規カタログに掲載された, 初代モデルとしての "最有力候補" とされている。12時位置の逆三角形と 3・6・9 のアラビア数字インデックスというエクスプローラーのデザインの源流となったモデルとも言え, ペンシル時分針, 秒針の先端ドット, ハニカム ダイヤル(蜂の巣状の模様)など初期型ならではの仕様となっている。ハニカム ダイヤルは, この時代の他のモデルにも見られるが, 全エクスプローラーの中で Ref.6350 が唯一このダイヤルを採用している。また, Ref.6350 はクロノメーター公式認定を受けており, 1世代前のモデルである Ref.6150 との差別化が図られた。ロレックス エクスプローラーと言えば, 正にクロノメーターのことが話題に挙がるほどである。そもそもエクスプローラーには複雑機構はなく, 派手な装飾もない。ロレックスのスポーツモデルの中でも最もベーシックなモデルであり, 正確で高い視認性こそがこのモデルの最大の特徴である。また, キャリバーは前作同様「Cal.A296」を搭載し, 振動数:毎時18,000振動, 防水性能50m, ケース径36mm, プラスチック風防などの仕様変更はない。
- ②「Ref.6610 / 画像④」は, 1955年~1959年に製造されたエクスプローラーⅠの第二世代のモデルである。ダイヤルは1950年代半ば頃のロレックス スポーツモデルに多く見られた, ミニッツ サークルが描かれたミラー(ギルト)ダイヤルが装備されている。基本的に 3・6・9 のインデックスとベンツ針の組み合わせを持ち "エクスプローラーダイヤルの原点" とも言えるリファレンスであった。これらは, ロレックスの中で最も長い歴史を持つ「Ref.1016」に引き継がれることになる。また, 搭載キャリバーの「Cal.1030」は両方向巻上げとなり, ゼンマイの巻き上げ効率が格段に向上した。振動数:毎時18,000振動, 防水性能50m, ケース径36mm, プラスチック風防などは前作と変わらない仕様である。丸みを帯びたセミバブルだったバックケースがフラットになりスリムな外観となった。Ref.6610 は, 現在 ビンテージ市場で人気のある Ref.1016 よりも製造期間が短く, 現存する個体数が極端に少ないことから極めて希少価値が高く, 店頭では殆ど見かけることはないだろう。 因みに, エクスプローラーの中で最も希少価値の高いモデルは, ホワイトダイヤルを備える "アルビノ" である。この時代には, サブマリーナーとGMTマスターにもアルビノ ダイヤルが存在した。
第3世代 Ref.1016 ミラーダイヤル
Ref.1016 ミラーダイヤル
- ①「Ref.1016 / 画像⑤」は1960年~1990年までの長きにわたり製造されたエクスプローラーⅠの第3世代のロングセラーモデルである。前作までは, 各ディテールが異なる個体も多く, 曖昧だったデザインをスポーティーなデザインに集約して, この Ref.1016 に継承した。他のロレックス スポーツモデル同様にミラー(ギルト)ダイヤルの前期型とマットダイヤルの中後期型が存在し, こちらはミラーダイヤルを装備する前期型の初期タイプである。 ミラーダイヤルには, Ref.6610 のデザインを受け継ぐミニッツ サークルが "描かれた初期タイプ" と "描かれてない後期タイプ" がある。ダイヤル上のROLEX ロゴやその他の書体はどちらも金色で記され, 6時位置には2行の “Superlative Chronometer Officially Certified” が表記されるようになる。また, プラスチック風防とケース径の変更はなく, 前作からの大きな変更点は防水性能が100mに向上したことと, 搭載キャリバーにはロレックス社が開発したマイクロ ステラナットによる時間微調整機能を備える, 毎時:18,000振動でパワーリザーブが48時間の「Cal.1560」を搭載した。
- ②「Ref.1016 / 画像⑥」は1963年~1967年頃に製造された個体である。ミニッツ サークルがないオープンチャプターで前期型の後期タイプのダイヤルを備えている。 ミラーダイヤルは高価なメッキ加工を使用して, 艶のある漆黒の表面に金色文字を浮かび上がらせる。文字やインデックスをマスキングして, 黒い塗料をダイヤルに塗布する。 その後, ラッカーを吹いて光沢を出すのだ。1957年以降に製造された個体で現在までその姿を保っているのは, これらのダイヤルである。1957年以前は, 全てというわけではないが, 光沢さがやや劣るフラットな外観のブラックダイヤルが大半であった。このタイプ/画像⑤を含む Ref.1016 には, アンダーライン, エクスクラメーション(ビックリマーク /!), トロピカルダイヤルなど, エクスプローラーフリークではない限り覚えきれないほどのバージョンが存在する。因みに, オープンチャプターのタイプなら1年~3年くらい根気よく探せば高価だが, まだ状態の良い個体に出会えるかもしれない。
第3世代 Ref.1016 マットダイヤル
Ref.1016 マットダイヤル
- ①「Ref.1016 MK-0 / 画像⑦」は1967年~1990年まで製造された, マットダイヤルを装備するエクスプローラーⅠの第三世代にあたるロングセラーモデルである。1967年頃, Ref.1016 はミラーダイヤルからマットダイヤルへと移行した。マットダイヤルは, ミラーダイヤルのような手の込んだメッキを使った加工ではなく, はるかにシンプルな製法で作られており, コストも抑えられたという。このマットダイヤルの Ref.1016 は1989年に次世代機である Ref.14270 が登場するまでの20年以上にわたり進化を遂げてきた。ダイヤル上のロゴや表記が白色に変更された "中期型" を経て, 1972年頃からキャリバーにハック機能が搭載された "後期型" となる。主な仕様は毎時19,800振動のキャリバー「Cal.1570」を搭載し, パワーリザーブ48時間, ケース径36mm, 防水性能100m, ドーム型プラスチック風防が装備された。
- ②「Ref.1016 MK-1 / 画像⑧」は1967年~1990年まで製造された, マットダイヤルを装備するエクスプローラーⅠの第三世代にあたるロングセラーモデルである。「MK-1 / 画像⑧」ダイヤルの主な特徴は, 12時位置の王冠マークが "フロッグ フット調"(カエルの足)で書体が "MK-0 と同様の ゴシック体" で表記されている。その「MK-0 /画像 ⑦」は, 生産期間が1969年初期頃の約1年間であるため極めて現存数が少なく, エクスプローラーⅠのコレクターであっても入手 "最" 困難なバージョンである。恐らく, 前期型の後期タイプ(オープン チャプター)のミラーダイヤルより入手が難しいのではないだろうか。
- ③「Ref.1016 MK-1 / 画像⑨」は1967年~1990年まで製造された, マットダイヤルを装備するエクスプローラーⅠの第三世代にあたるロングセラーモデルである。 このダイヤルは MK-1 ダイヤルのうちの一つ, 通称「メガファット」でもある。メガファットとは Ref.1016 の歴代マットダイヤルの中で "3・6・9" の夜光インデックスが最も太く可愛らしい特徴をもっている。1967年頃のほんの僅かな製造期間であるため, 極めて希少価値が高くお目にかかれることはないまず無いと言ってもまた, 生産期間の長かった Ref.1016 にはリベットブレス, 巻き込みブレス, ハードブレス, ジュビリーブレスといった様々なブレスが装着されているのを目にする。リベットブレスは,1954年~1971年まで, 巻き込みブレスは1967年~1976年まで, 1976年以降はより堅牢で現在でも頻繁に見かける「ブレス No.78360」のハードブレスが標準装備された。
- ④「Ref.1016 MK-2 / 画像⑩」は1967年~1990年まで製造された, マットダイヤルを装備するエクスプローラーⅠの第三世代にあたるロングセラーモデルである。 この「MK-2」ダイヤルは, 1975年~1976年まで製造された個体に装備され, 書体が MK-1 と異なる "明朝体" で表記されている。それにより, 印象がやや現代風のダイヤルに変わった。また, MK-2 ダイヤルを装備した, このバージョンを含む1972年以降の中期型では, リューズを引くと秒針が止まる "ハック機能" がキャリバー「Cal.1570」に追加された。毎時19,800振動にハイビート化された「Cal.1570」はロレックス社製ムーブメントの最高傑作と称されている。 1990年に生産が終了するまでの約19年間, Ref.1016 の全てのラインナップに搭載され続けた。
- ⑤「画像⑪のダイヤル」は1967年~1990年まで製造された, マットダイヤルを装備するエクスプローラーⅠの第三世代にあたる Ref.1016 のダイヤル「MK-3~MK-5」である。 MK-3 は'76年~'79年頃, MK-4 は'80年~'86年頃, MK-5 は'86年~'91年頃に製造された個体に装備されていた。ご覧いただいても分かるように, MK-2 と MK-5 のダイヤル ロゴは見分けがつかないほど類似しているが, 経年変化するにつれて MK-2 のダイヤルはトリチウム夜光の焼け具合が MK-5 より濃く変色するようである。生産終了間際の "R" と 最終シリアル "L" の個体は高年式であるため, 付属品等のコレクションアイテムが完全に揃った大変状態の良い, いわゆる "完品" が探せばまだ見つかるのではないだろうか。しかし, 近年 都内の販売店でE品番(製造年 '90年~'91年)を入手したと話題になった。となると,"E品番" が最終となるので R品番の人気と価格はこれから低下するのだうか...。尚, R, L, E 品番のダイヤルは MK-5 だ。また, 1980年代から風防は丸みのあるドーム型から, 平なタイプのフラット風防に変更され, ダイヤルの変遷とともにエクスプローラーⅠは一歩づつモダンなデザインへと移り変わることになっていった。
第4世代 Ref.14270
Ref.14270
- ①「Ref.14270 / 画像⑫」は, 1990年~2000年の約10年間にわたり生産されたエクスプローラーⅠの第4世代モデルである。この Ref.14270 は, 俳優 "木村拓哉 氏" がドラマで着用したことから, 若い世代にロレックスの人気が急上昇し,"空前のロレックス ブーム" を起こしたモデルでもある。先代モデルからのデザイン上の変更点は, これまでのエクスプローラーで継承されてきた, 丸みのある 3・6・9 のインデックスがスクエア形状の書体に変更されたことで, 現代的な印象に大きく変わった。 ブレスレットはシングルロックのバックルが1995年からダブルロックに変更。モデル末期の1999年には夜光からスーパールミノバ に変更され, 6時位置にある表記も合わせて変更された。風防はプラスチックからサファイア クリスタルに, 自動巻きムーブメントは「Cal.3000」が搭載された。Cal.3000 は, 当時のロレックスの主力ムーブメントで毎時28,800振動, 48時間のパワーリザーブを備えていた。また,5thモデルである「Ref.114270」は2000年に登場して, 生産終了までの10年にわたり販売されていたモデルであり, Ref.14270 とデザインの変更点は数少なく, いかに Ref.14270 が "完成されたモデル" であったかがうかがえる。この後に登場するエクスプローラーは, この Ref.14270 をルーツとしている。
- ②「Ref.14270 / 画像⑬」は通称「ブラックアウト」と呼ばれている。生産最初期に存在するモデルであり, 通常はダイヤルの 3・6・9 のインデックス上に白い夜光塗料のラインが入るが, ブラックアウトに関しては入っておらず, メタル枠にブラックのエナメルで仕上げられている。この時計自体の生産数は, 非常に少なくE品番後期とX品番前期のシリアルナンバーでしか見られなかった。特に生産初期の"E"品番は希少なモデルとされており, 発売時の評価が低かったと言われている。 これが新型エクスプローラーのオリジナル デザインであった可能性が高く, ロレックスは視認性が不十分であると判断したため, 僅か2年程度で仕様変更したと推測される。 因みに, 1989年から1991年までは "ブラックアウト", 1991年から1998年までは " T-Swiss ", 1998年から1999年までの過渡期にあたる " Swiss Only ", そして1999年から2001年の生産終了までは " Swiss Made " というダイヤルのバリエーションが存在した。
初代 Ref.1655(Ⅱ)
Ref.1655(Ⅱ)
- ①「Ref.1655 / 画像⑭」は, 1971年~1983年の約12年間にわたり生産されたエクスプローラーⅡの初代モデルである。自然界の過酷条件のもと, 登山や洞窟探検などに挑む冒険家をサポートするため, エクスプローラーⅠの上位機種として開発され, 洞窟など昼間の光で時刻を確認できない場所でも, ひと目で昼と夜を区別できるようにデザインされたモデルでもある。また, 厳しい環境下で使用されてきた素晴らしい歴史がある。当時のエクスプローラーⅠがケース径36mm ケース厚13mmに対し, エクスプローラーⅡはケース径40mm ケース厚15mmと極めて堅牢な造りになっている。主な仕様は防水性能が100m, 24時間目盛りを備えたベゼル, リューズガード, 大きな三角形の視認性に優れた24時間針, 日付表示機構も標準装備されている。これらもエクスプローラーⅠとは差別化された仕様だ。搭載キャリバーは, 毎時:19,800振動でパワーリザーブが48時間の「Cal.1570」を搭載している。
- ②「Ref.1655 / 画像⑮」は, 1977年~1983年の期間に製造された「マーク5」のダイヤルを備えるモデルである。コレクターの中で最も人気があるのは, 製造開始の1971年から約1年間で製造された最初期のモデルで, そのダイヤルは「マーク1」と呼ばれている。ダイヤル上の王冠マークやロゴの表記がやや小さく, 秒針にドットが無い "ストレート針" を備える。Ref.1655 には「MK-1~MK-5」まで存在するが, どのバージョンもシンプルすぎず且つ完成されたデザインで, 非常に美しくビンテージとしての価値も大変高い。1972年頃, ストレート秒針から視認性向上のため, 夜光塗料が塗布されたドット付きの秒針に変更され, ダイヤルは12時位置の王冠マークが "フロッグ フット調"(カエルの足)の「MK-2」となる。MK-1 ダイヤルに次いで人気が高いとされる「MK-3」の最大の特徴は, ダイヤル上の6時位置のクロノメーター表記が "センタースプリット"(画像)であり, 1974年から1977年頃に製造された個体で確認されている。尚, MK-3 の王冠マークも MK-2 とは若干フォルムが異なるものの "フロッグ フット" である。
第2世代 Ref.16550(Ⅱ)
Ref.16550(Ⅱ)
- ①「Ref.16550 / 画像⑯」は, エクスプローラーⅡの第2世代モデルである。生産期間がわずか 4, 5年のため, 現在, 個体数が比較的少なく希少な個体も存在している。この 4, 5年の間でも実際の製造は2年程や, 1988年に再販されたなど, 様々な噂が飛び交う非常にミステリアスなリファレンスである。外装デザインはグッとモダンになり, ドット インデックスとベゼル書体のデザインを一新。風防がサファイア クリスタル素材に変更されるなど, 現行エクスプローラーⅡのデザインにより近づいた。また, エクスプローラーⅡは, この Ref.16550 から白文字盤のバリエーションが追加された。尚, ムーブメントがより高精度な「Cal.3085」へ移行され, 大幅にスペック アップされた。ただ, 開発初期ではないにも関わらず, なぜ Ref.16550 だけ製造期間がここまで短いのかは明かされておらず, 一説には「Cal.3085」に初期不良が多かったというものがあるが, 市場に出回っている Ref.16550 に故障が多いと言った話はあまりないようである。
- ②「Ref.16550 / 画像⑰」は, 初期モデルに見られるレアな個体の「センタースプリット」の「アイボリーダイヤル」である。センタースプリットは文字どおり "中央分割" という意味で,"文字盤に表記された文字" から命名された文字盤に対する名称なのだ。ロレックスのモデルに命名された通称は, 文字盤に対する名称が多い。 全てのロレックス オイスターの文字板には, 真のクロノメーターであることを意味する "SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED" という英字が2段に分かれて表記されている。多くのモデルは上段下段の中間スペースがズレて表記されているが, センタースプリットと呼ばれるモデルでは, 中間スペースが上下に揃って綺麗に中央で分かれている。海外では「レイル ダイヤル」とも呼ばれている。
- ③「アイボリーダイヤル」は文字どおり "アイボリー色の文字盤" を指す。一説では元々アイボリー色で販売されたとの話もあるようだが, 有力な説は経年変化により変色したとの説である。その変色度合にもよるが, 通常のモデルとは明らかに異なる色合いをしている個体も多く確認されている。筆者も10年程前, 銀座にある販売店で実際にアイボリーを手に取って試着したことがあるが, 実に素晴らしい色合いをした文字盤だった。アイボリーの色味が濃ければ濃いほど価格は上がり, 状態が良く美しく焼けている個体は300万円以上の価格になる。ロレックスのレアモデルは文字盤の表記やチョッとした違いによるものが多いが, アイボリーダイヤルはパッと見て独特な個性を持っているため, マニアからの評価が特に高い個体だ。黒文字盤には通称「スパイダーダイヤル」という文字盤も存在するが, 白文字盤では確認されてないようだ。こちらも文字通りで, 経年劣化で文字盤自体が "蜂の巣" 状にヒビ割れした文字盤のことを指す。また, 黒文字盤(画像⑱)のインデックスのフチや長短針がシルバーで, 白文字盤は文字盤と同化しないよう生産期間中の初期頃に黒くペイントされ視認性が確保されるようになった。